第35章 番外編 F6 チョロ松と専属メイドの秘め事(長編)
行為を終え、しばらくの間、二人とも無言だった。
けれどそれは渇いた時間では決して無い。
心が通じ合う喜びを噛み締めるように、互いに肌を寄せ合い、甘い余韻に浸っていた。
「主」
「はい」
腕枕から少しだけ首を浮かし、チョロ松様の瞳を見つめる。
「今はまだメイドとして仕えている以上、私達の関係は公には出来ませんが、いずれ時が来たら…その時は、正式に…わ、私のつつつまつまつつ……っいたっ!」
舌を噛んでしまったようだ。
「だ、大丈夫ですか!?」
「や、やややっぱり何でもありません!あ、貴女という書物を、もう少し熟読してから続きは話します!」
「ふふっ、分かりました。しっかり一ページずつ読み進めてくださいませ」
「なっ!?」
笑顔でふざけると、途端にチョロ松様の顔が真っ赤になる。
「やはり、貴女はヒエログリフよりも難解です…」
「そんなこと…ありま…せん……」
急に睡魔が襲ってきて、瞼が重くなってきた。
(まだ…お話したい…のに…)
目を瞑ると、髪を心地よく撫でられる。
「疲れたでしょう。少し眠りなさい」
「チョロまつ…さま…」
—ガサッ—
ブランケットを肩までかけてくれたようだ。
起きていたいのに、益々眠くなっていく。
「主、目が覚めてもどうか忘れないで」
薄れ行く意識の中、チョロ松様の声が頭に響く。
「二人で愛し合った時間を…心に焼き付けて…」
…忘れるはずが…ありません…
「もしはなればなれになってしまっても、違う世界へと旅立ってしまっても…」
どうして…離れるなんて…?
「永遠の愛を——誓います」
チョロ松様……?
「お休みなさい…主」
・・・
・・・