第35章 番外編 F6 チョロ松と専属メイドの秘め事(長編)
—…ちゃん—
—主ちゃん—
誰かに呼ばれる声がする。
(チョロ松様の…声?)
そうだ。
わたしは眠ってしまったのだ。
「うーん……」
うっすら目を開けると、見覚えの無い天井だった。
「!?」
驚いて飛び起きると、わたしの目に飛び込んできたのは…
「チョロ松くん!」
「お、おはよう!ぐっすり眠っていたね!」
わたしの恋人、チョロ松くんだった。
チョロ松くんはわたしが目覚めたのを確認すると、すぐさま缶コーヒーを開けて渡してくれた。
「ありがとう!えっと、ここって?」
「ハハッ、もしかして寝ぼけてる?昨日酔っ払って二人でラブホに泊まったんだよ。実は、僕も悪酔いしてあんまり記憶無いけれど」
照れ隠しなのか、頭を掻きながら話している。
わたしがコーヒーを一口飲んで渡すと、チョロ松くんも嬉しそうに喉を鳴らして飲んだ。
「プハーッ!ブレインが目覚めるーっ!!」
「えっ?今、何て言ったの!?」
「そ、そんな大した事言ってないけど、どうしたの?」
「なんでも…ない」
チョロ松くんは不思議そうにわたしを見つめている。
「ちょっと、ね。夢で似たような台詞を言われた気がして」
「そう?そういえば、僕も久しぶりに長い夢見たんだ」
「どんな夢?」
夢について聞いただけなのに、一気に顔が赤くなっていった。
「い、今はまだ内緒!!そのうち教えるよ!さぁ、もうすぐチェックアウトの時間だから支度しよう!」
(うーん、この感じ。夢の中でもあったような…)
チョロ松くんが、起きようとするわたしに手を差し伸べてくれた。
「ありがとうございます!チョロ松様」
「えぇっ!!??」
「あれ?変な呼び方しちゃった」
何だか、幸せなのにちょっぴり寂しいような…そんな不思議な朝だった…。