第5章 四男と雨だれ
浴室からシャワーの音が聞こえてくる。
主がいないのをいいことに、おれはテレビを消すと猫耳を出して聞き耳をたてた。
悪趣味?べ、べつにいいだろ風呂の音聴くくらいっ!覗いてるわけじゃないし!
うるさいシャワー音と共に、シャンプーのポンプを押す音が聞こえてくる。
(なんか、興奮してきた…)
雨のおかげで家に上がり込めたけどさ、アイツ、おれのことをかわいいロシアンブルーかスコティッシュフォールドと勘違いしてない?
自信が無くて手を出してないだけで、頭の中では何度も主とヤりまくってるんだけど。
それはそれは激しくさ。
こんな、2人きりで、しかもお互いシャワー浴びている状況とか。
(主は、もしかしておれを誘ってるのか?)
人知れずドキドキしていると、不意にシャワーが止まり猫耳がピクンとはねた。
耳のおかげで、主が湯船に浸かる音までリアルに聞こえてくる。
壁を一枚隔てた先に、何も着けず無防備な主がいる。
本当は今すぐギュってしたい。
ギュってしたのち、おれの手であんなコトやそんなコトをヤりまくりたい。そしてヤラレたい。
でも、もしも上手くいかなかったらどうする?
それで嫌われて、アイツがおれから離れて行ったら?
マイナス思考が足を引っ張る。
だけど、あいつは前におれに言ったよな。
「……チッ」
猫耳をしまい立ち上がる。
『一松くんのこともっと知りたいし、わたしのことも知ってほしい』
(おれだって、お前のこと……)
ドクぺを一気飲みして、痛いほど高鳴る胸の鼓動を炭酸の痺れで誤魔化すと、おれは立ち上がり風呂へ向かった。
・・・