第35章 番外編 F6 チョロ松と専属メイドの秘め事(長編)
「お前の気持ちはどうなんだって聞いているんだ!」
「な、ななな、何でそんなこと聞く!?」
チョロ松様の頬がみるみる紅潮していく。
「チョロ松!いつまで自分に嘘をつき続ける!」
「なっ!?ぼぼ、僕は……っ!!」
「ちょっとちょっとー!兄さん達何ケンカしてんのー!!」
「!!」
トド松様がただならぬ雰囲気を嗅ぎつけたのか、早足でこちらにやって来た。
後ろには一松様もいる。
パッとチョロ松様の手がわたしの肩から離れた。
「トド、喧嘩はしてないよ。大丈夫さ」
「ホントに?ボク、みんなが仲良しじゃないと寂しいよ…」
「え、ええ、少し口論になっただけだから、安心して…」
「……」
一松様は無言でわたし達三人を探るように見ている。
「主、あそこにあるのは私が自室で読んでいた本ですか?」
チョロ松様は地面に落ちた本に気がついた。
「は、はい!書庫へ運んでいる途中で転びそうになり…おそ松様に助けて頂いたんです。汚してしまい、大変申し訳ございません…」
「…そうだったんですか。怪我がなくて良かった」
チョロ松様は本を拾い上げると、おそ松様をキッと睨みつけた。
「僕の主が世話になったね。さぁ、書庫へ置きに行きますよ」
「あ、待ってくださいっ!…皆様、失礼致します!」
おそ松様達にお辞儀をして、わたしはチョロ松様の後を追いかける。
・・・
「ねぇねぇ、あの二人ってさ、最近二人で並んでるのが様になってきたよねっ」
「トド松!よせっ!」
「えっ、何?一松兄さん?」
「——なんでもない」
「……」
(結果…ますますあいつらの絆が深まっちゃったな)
おそ松は、胸の奥の痛みをひた隠しにしながら、二人の背中を見えなくなるまで見つめていた。