第35章 番外編 F6 チョロ松と専属メイドの秘め事(長編)
外に出ると、先ほどまで晴れていたのが嘘のように曇ってしまっていた。
太陽は厚い雲に覆われている。
「予報が外れて雨が降りそうですね」
「そうだね。せっかくチョロ松が帰ってくるのに…」
メイド達は急いで洗濯物を取り込んでいる。
お屋敷中の洗濯物なのだから、それはそれは膨大な量だ。
ご主人様達の衣類だけでなく、使用人の服、ベッドシーツや枕カバー、カーテン、バスタオル等、山のようにある。
(そっか、それでみんな忙しそうにしていたんだ)
「あの、本を書庫に戻したら、わたしも洗濯物を取り込みに行ってもよろしいでしょうか?」
「ハハッ、勿論イイよ!でも、ちょっと待ってて」
「え?」
おそ松様は、深呼吸をしたかと思うと、雲の向こうに向かい声を張り上げた。
「照れていないで、こっちに可愛い顔を見せてごらーん!!」
「おそ松様!?一体何を!?」
すると——
雲の合間に裂け目が出来たかと思うと、
「えぇぇぇえーーーー!!??」
太陽の周りにあった雲が、まるでモーゼが海を真っ二つにしたかのように分かれていき、そのまま煙のように消失した。
「うん、イイ天気だ」
「……」
開いた口が塞がらなかった。
これが、一国家に匹敵する権力を持った、赤塚不二夫財閥、松野おそ松様の力…!?
というか、人類だけじゃなく万物をも虜にするの!?
どこからツッコんだらいいのかもう分からない。
「これでみんなの仕事が減って、少しは休憩出来るかな?さぁ、書庫へ向かおうか」
「は、はい……あっ!?」
驚きのあまり、足元がよろめいて薔薇の花壇に倒れそうになり、
「主ちゃん!!」
—ドサッ—
本が落ちる音が聞こえたかと思うと、
わたしは、おそ松様の腕の中にいた。