第35章 番外編 F6 チョロ松と専属メイドの秘め事(長編)
失礼な発言をしてしまって気まずくなったタイミングでノックがし、内心救われた気持ちになった。
「どうぞ」
チョロ松様の声を確認すると、執事さんがお辞儀をしながら部屋に入ってくる。
「チョロ松様、おそ松様が新曲のPV撮影日程の確認をしたいそうなので、主を呼んでおります」
おそ松様とは、六つ子のご長男である。強いカリスマ性とリーダーシップを兼ね備え、『人間国宝』という最強の称号を持つお方だ。
「おそが?そんなの、私が直接行けば済む話でしょう?」
「ですが、主に候補日を幾つか告げ、その中から大学の講義と重ならない日程を、後ほどご連絡頂きたいとおっしゃってますが」
ふうむと顎に手をあて考え込み、
「分かりました」
チョロ松様は納得したようだった。
「では、行って参ります」
執事さんに続きぺこりと頭を下げ、空いたカップを持って部屋を出ようとすると、チョロ松様に呼び止められる。
「えっと、主」
「は、はいっ!」
呼び捨てに馴れていないので胸がドキリと弾む。
落としかけたカップを平静を装い持ち直す。
「あまり、寄り道せずに戻ってくるように」
「かしこまりました」
どうやら、少しご機嫌ナナメなようだ。