第34章 番外編 F6 一松と囚われの姫君
意識を突然深淵の中に放り込まれ、俺は夢を見た。
記憶の奥底に眠る愛の欠片。
そう、あれは…とある蒸し暑い夏の日——。
俺は主と二人、草むらに寝転びながら、二人の将来を語りあった。
お前は、俺が吹いていた草笛を奪い、俺の真似をしたが上手く出来ずに頬を膨らませる。
そんなお前を俺がからかうと、怒りながらも少しはにかんで、そっと寄り添ってきた。
胸の中の甘く苦しい感情を抑えきれなくなった俺は、お前の肩を抱き寄せた。
互いに見つめ合い、あどけない少女のようなお前の、薄紅色の唇をそっと……————