第33章 アンケート投票第1位 心霊スポットツアー おそ松
「あんれぇー!なんも見えないねー!」
十四松くんは、降りた途端ペンライトを両手に持って振り回し、はしゃぎ回っている。
わたしは懐中電灯で前方を照らした。
草木が生い茂る先に池のようなものが見える。
「えっと、ここは何ていう…」
「心霊スポットツアーその一。松の沼…」
「キャーーッ!!」
「わぁーーっ!!」
耳元でおどろおどろしい声が聞こえ、思わず悲鳴をあげると、わたしの悲鳴に驚きトド松くんも叫んだ。
「主ちゃん、その不気味な声の主は一松だから」
隣のおそ松くんが呆れるように笑った。
「…スイマセンね。幽霊みたいな声と存在感で…」
「こ、こっちこそゴメンなさい!っていうか、懐中電灯を顔の下から当ててるのはなんで!?」
「……雰囲気作り」
「そ、そう…。すごく怖いよ。それ…」
わたしがそう言うと、一松くんが一瞬ピクッと笑った気が…した。彼はそのまま語りだす。
「ここは…松の沼。別名悲恋沼…。二次元に溺れ、現実世界に戻ってこられなくなった乙女達が、次々に身を投げたという自殺の名所…。地元住民からは、夜な夜な女のすすり泣く声が聴こえるという証言が後を絶たない。そして…声を聴いた者は、何者かに沼へ引きずり込まれる…と、もっぱらのウワサである……———」
(なんか、一松くんがナレーター口調になった…)
「怖いよーー主ちゃーーん!!」
トド松くんが駆け寄りわたしとおそ松くんの間に入ると、わたしの服の袖をキュッと掴んだ。