第29章 アンケート投票第2位 注文の多い猫松 前編
(さっきのは、何だったんだろう?)
腑に落ちないままバスタオルを巻いて廊下に出ると、黒くて長いベルトのような物が落ちていた。
よく見ると、それはベルトではなかった。
黒いもふもふの尻尾?
尻尾のような物の付け根には、紐が二本。
拾い上げた時、床の紙切れに気がつく。
紙にはメモ書きがあった。
(えっと、全裸の状態で、腰に尻尾を二本の紐で結び着けてくださ…い!?)
怪文書を読んで固まっていると、薄暗いリビングからまたもや鋭い視線を感じる。
(あの目は、逆らっちゃいけない目だ…)
たぶん、着けないと絶対に怒る。そして、ふてくされたのち乱暴される。
恥ずかしさをこらえながら、わたしはバスタオルを外し、ふわふわな尻尾を尾骶骨付近に着けた。
尻尾が脚に擦れ、くすぐったいのを我慢しながらリビングへと進む。
リビングは何故だかルームランプのみ点いていた。
雰囲気づくりなのかもしれないが、さっきの怪文書のせいで、部屋中薄気味悪い。
(まだ何かあるのかな?)
ふとソファーに目をやると、嫌な予感が当たってしまった。