第29章 アンケート投票第2位 注文の多い猫松 前編
主人公視点
お風呂に入りたそうにしていたので、ワザとわたしからシャワーを浴びに行くと、案の定、一松くんがヒョコっとお風呂場に顔を出した。
そのままエッチになるかと思ったけれど、大人しく身体を洗いすぐ上がって行った。
ちょっと拍子抜けしたけれど、純粋にシャワーを浴びたかっただけなのかもしれない。
(下半身は反応していたのに…って、何でわたしそんなイヤラシイ発想を…)
期待している自分に恥ずかしくなった。
シャワーを止めて浴室から出る。
いつものように、顔と身体の保湿をしてからバスタオルを身体に巻き、ドライヤーで髪を乾かし始めた。
すると…背後に異様な気配を感じる。
鏡越しに後ろを見れば、ドアから半分だけ顔を出した彼がいた。
パンイチで待ち構えている。
鏡の中で目が合うだけで、何も言ってこないし何もしてこない。
(なんだろ?すごく不審者なんだけど)
まるで、獲物を仕留めようとする猫のように、じっと睨みつけてくる。
ドライヤーを切って後ろを振り返る。
「ねえ、どうしたの?」
既に彼の姿は無かった。