第29章 アンケート投票第2位 注文の多い猫松 前編
晩飯を食べ終わったら、いよいよコイツらの出番だ。
おれは、主にバレないよう、イスの下にモフモフな猫耳ヘアバンドと尻尾、肉球手袋を隠していた。
帰りにトンキで買ってきたんだ。
仕事で疲れたおれを癒すために、主を猫にしてご奉仕させてやる。
でも、どうやって着けさせよう?
「今日はもう帰るの?」
「は?なんで?帰って欲しいの?」
「ちがうよ。なんとなく」
(なんとなくそんな寂しいことを言うな!)
せっかく猫耳買ったのにヤらずして帰るバカがいるか。
「し、仕事で汗かいたから…」
「うん?」
「……シャワーを」
「シャワーを?」
「……」
(ダメだダメだ!言えないっ!自分からシャワー借りたら、さもヤりたいですって言ってるようなもんだろ!!)
沈黙したおれに痺れを切らしたのか、主は皿を洗いにキッチンへ行ってしまった。
さ、寂しい…!
(あーーあ、バカ正直になれたらなぁ!洗い物している主を後ろから襲って猫耳付けさせてクンニするぐらい、おれも素直になりてぇーーーー!!もういっそのこと、黙って風呂借りて全裸で登場したら、何も言わなくても伝わるか!?ヤりたくてしょうがないですって伝わるのかっ!?)
「一松くんっ」
「っ!?」
ソファーの上で体育座りしながらあーだこーだ考えていると、いつの間にか主が目の前にいた。
「わたし、汗かいちゃったからシャワー浴びてくるねっ」
「え?」
「いってきまーす」
おれがあんなに悩んでいたのがバカみたいに、主は自ら風呂場に向かった。
(ヤるっていう、意思表示…だよな?)
主の家で風呂に入る時は、大抵一緒に入っている。
イスの下から猫グッズを取り出すと、ある名案が浮かんだ。
(何も、自分から誘わなくてもいいんだ。仕向ければ…)
おれはTシャツを脱ぎ捨て、作戦を決行することにした。