第29章 アンケート投票第2位 注文の多い猫松 前編
「あははははっ!!窓際で猫と日向ぼっこって!そんなの怒られるに決まってるでしょーっ!!」
傷心で帰ってきたおれを、主は笑い飛ばした。
腹をかかえてものっすごく爆笑してる。
「もういい……どうせ、店長に粗大ゴミシール貼られる」
「わたしがいたから甘えてきたのかと思ったら、あれは猫になってたんだね」
主は笑いながら、目の前にサラダとハンバーグドリアを置いた。
「なんだよ、おれなりに…がんばったのに」
「ひとまず食べよう?いただきます!」
「…食欲ない」
俯いて猫背が更に丸まる。
どうせおれなんて、ゴミを漁って生きていればいいんだ。
こんな、キラッキラした手料理様なんて、食べる資格すらないクズ。
「あのね、店長は人間を雇ったのであって、猫を雇ったわけではないでしょ?」
「は?」
「だから、猫の役目は猫に任せて、一松くんは店員として頑張らないと」
「……」
何そのド正論。
その通りなんですけど。
「じゃあ、猫役でもう一度面接してもらう」
「なんでそうなるの!?」
「そっちの方が向いてそう」
主は呆れ顔でコップにドクぺを注ぎだした。
さっきから笑われ呆れられ、肩身が狭い。
「まぁ、とりあえず人間でがんばろう?ほら、食べて」
ドクぺを一口くいっと飲んでから、おれに飲みかけのコップ渡してきた。
間接キスでおれを翻弄しようとしてんの?あざとっ。
いや、既に翻弄されてますけどね。
おれはしぶしぶフォークを手に持つ。
「…いただきます」
「召し上がれ!」
いざ食べようとドリアにフォークをつけた時に気がついた。
「いやなんなの?かわいくて食えない」
猫型ハンバーグとか可愛すぎかっ!
「もう!どんだけ猫好きなの!」
「ムグッ!?」
無理やり口に入れられた。
(コイツ、また無理やり!人の口をなんだと思ってんだ!あれ?でも…なんか、すげーうまい)
結局ペロリと平らげたのだった。