第28章 ※アンケート投票第3位 十四松パンとわたし
「主ちゃん、着いたよ!」
ゆっくりと地面に足が着く。
「ここが、わたしが一番来たかった夢のような場所?」
「ダッサ、所詮凡人ってワケね」
そこは、なんてことない近所の河川敷。
わたしと十四松くんが出会い、沢山の時を過ごした場所。
「主ちゃんのキモチが、ぼくたちをここに連れてきてくれたんだよ」
「うん…そっか」
「あれー?嬉しくない?」
「ううん、すごく嬉しいよ」
目に涙が溜まる。
十四松パンに気づかれぬよう下を向いた。
「ゲッ!?」
ティンカーイチちゃんにはバレてしまったみたいで、気まずかったのか十四松パンの帽子の中に隠れてしまった。
十四松パンは帽子をそっと撫でると、わたしを見つめ語りかけてきた。
「ここは、ぼくたちの思い出が沢山詰まった河川敷。一緒に演奏して、素振りして、トスバッティングして、泳いで——ぼくが告白した、夢のような場所」
(一緒に泳いだ記憶はないけれど…)
「うん、そうだね。2人の夢のような場所!」
嬉しくなって胸の中に飛び込むと、いつものようにふんわりと抱きしめられる。
「十四松パン。今日は、素敵な時間をどうもありがとう。やっぱりスゴイや。十四松く…パンには何だって出来ちゃうんだね」
「何でもは出来ないよ?ぼくラッパ吹けないし」
「そ、それでもスゴイものはスゴイの!!」
十四松パンの腕に力が込められ、さっきよりもキツく抱きしめられた。
「…お別れの前に、チューしよう?」
「うん…ねえ、また会えるよね?」
「会えるよ。ぼく、いっぱい会いに行くよ!」
「ふふっ、わたしもいっぱい会いに行く!」
ゆっくりと唇が重なり合い、夢のような、長い長いキスをした。
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