第28章 ※アンケート投票第3位 十四松パンとわたし
次にやってきた場所は…
「ここって…バイロイト祝祭歌劇場…!?」
「あっははー、ぜんぜんわかんなーい!」
「この建物はね…ドイツのバイロイトにある、大作曲家ワーグナーが自身の作品を上演するのを目的とし、計画、設計したワグネリアンなら一度は訪れたい聖地なんだよ!!オーケストラピットを舞台下に設けた構造は、神秘の奈落と呼ばれ、独特の包み込まれるような音響と、木造建築の暖かい響きとが相まって、観客をワーグナーの世界に引き込む素晴らしい歌劇場!!夢のような場所!!」
「このブス!長いし説明クサイし、知識をひけらかしてる感じがマジ腹立つ!!」
「ティンカーイチ、そんなこと言っちゃダメだよ。主ちゃんは自分を見失うくらい喜んでくれてるんだから」
「フンだ!」
十四松パンはむくれ顔のティンカーイチちゃんのほっぺをツンツンして笑っている。
「十四松パン!ありがとう!!本当に夢みたいだよ!」
「じゃあ、主ちゃんにとって一番夢のような場所に行こうか?」
差し出された手を繋いだ時、ふと疑問が浮かんだ。
「ねえ…さっきから、わたしだけ喜んでいるけれど、どうしてわたしが行きたい場所が分かるの?」
「十四松パンだからだよ!」
「え?」
「ぼくは、主ちゃんの夢を叶えるためにやってきたんだ!」
全然答えになっていないような…。
「早く行くわよ!!時間ないんだから!」
ティンカーイチちゃんがぴゅんと先に飛び立ってしまった。
「主ちゃん、行こう!」
「う、うん!」
わたしにとって、一番夢のような場所って一体どこなんだろう?
少し不安になり、十四松パンの腕を掴むと、そっと頬にキスをされた。
照れ臭くなって俯くわたしに、十四松パンは夜空に瞬くどの星よりもキラキラした笑顔を向けながら、再び夢のような空の旅に連れて行ってくれた。
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