第25章 傷ついたキミの瞳に、青く小さな恋の果実を… カラ松
カラ松視点
主が摘みたてのブルーベリーを一粒口に入れ、おいしそうに微笑んだ。
「わざわざ自分で摘みに行って、しかもお菓子まで作ってくれるなんて。嬉しいな」
今度はジャムをペロリとスプーンですくって舐めている。スコーンを差し出すと、嬉しそうにジャムを付けて食べ始めた。
「こんなの当然だ。昨夜、お前に無理をさせてしまったからな。ブラザーの言う通り、やはりオレは大切なものを傷つけてしまうギルトガイッ!!」
「うーん、どちらかというと、おそ松くん達の『イタイ』に近いのは、さっきのエプロンかな…」
「なぜだ!?なぜこうも難解なんだ!」
頭を抱える。脳がショートしそうだ。
一体ブラザー達と主は何を言ってるんだ?
「で、でも、本当に嬉しいんだよ?ってか、器用で尊敬しているし…。ほら、カラ松くんも食べて。わたしはその間お昼作るから」
「ダメだ。休んでいてくれ」
キッチンへ向かおうとする主の行く手を阻む。
「手作りおやつ食べたら頭がスッキリしたから平気!本当にもう何ともないよ」
「でもオレは、今日は……んっ!?」
不意に唇を奪われ、言葉を失う。
「待っててね?」
「は、はい…」
キスも抱擁も、セックスも…いつもオレからだったのに。
主から初めてキスをされた。
思いがけない出来事に、柄にもなく照れている自分がいる。
そして、下半身が…案の定反応している。
(触れるだけの愛らしいキスだったのに…オレってヤツは…どこまでも馬鹿だな)
すぐ女性に対し反応してしまうのは、オレ達兄弟の悲しいサガだ。
ましてや、恋仲である彼女ならなおのこと、些細なことでチョモランマである。
今日は主を無理させないと決めていたオレは、青く小さな恋の果実を口に放り込み、意識を他へ向けることにした。
キッチンに立つ主を見たいのを必死にこらえ、まどろむ子猫ちゃんをいつまでも眺めていた。