第23章 ぶどうって… 一松
(分かりやすくて、本当にかわいいよね…)
不安になると、すぐに愛のお薬を欲しがる一松くん。
今度は一体、何が原因で自信を無くしたのだろう。
(もしかして…『アーハン?』に笑ったから…?)
顔がにやけるのを必死に堪える。
「なに…ニヤついてんの?」
しまった。
既に顔に出てしまっていた…。
一松くんから、どんよりとしたオーラが放たれる。
「あのさ…人の話聞いてた?おれのこと、バカにしてんの?」
「ち、違うの!ほら、このぶどう見て!この子、一松くんみたいでかわいいなってニヤけていたの!」
「あ?」
わたしは、もがれて実がほとんど無くなっている房の、先の方に一粒だけ残っているぶどうを指差した。
「こうして、集団行動しているのに、ひとりぼっちな感じが…ってこ、こわいよ!その目つきどうしたの?」
「意味わかんないし…ケンカ売ってる?」
とっさの思いつきだったので、意味分からないのはわたしも同感だ。
結果…ますます彼を怒らせてしまった。