第23章 ぶどうって… 一松
主人公視点
会話があっちこっち変な方向へ行くので、また熱が出たのか心配して額に手を当てようと近づくと、
「な、なんだよ!」
「熱あるかチェックさせて」
「ない!熱なんてない!」
なぜか照れて逃げ回る。
「わたしにもっと恥ずかしい事沢山してるくせに、今更なんで照れてるの?」
「は、はぁっ!?」
そんなハレンチな事言うなんて信じられないっ!と、言いたげな目つきで睨まれた。
「もうっ、そんなに嫌がるならいいや」
ソファーに座り直し、またぶどうを一粒手に取った。
「……」
一松くんはわたしの横で体育座りをして、まるでアリの巣を観察している幼稚園児みたいに、じっと下をむいている。
「なぁ…」
「ん?」
モグモグ口を動かしながら、顔だけ一松くんに向ける。
また一粒むいたので、一松くんの口に持っていくと、素直に口をパクッとあけて食べてくれた。
「オマエは…なんで…」
「うん…」
「おれ…なんかと……」
憂鬱で寂しげな声が…ポツリポツリと生まれては消える。