第23章 ぶどうって… 一松
話を遮られてイラッとしたものの…
「…あんまー」
「ねっ、このぶどう美味しいよね!友だちが山梨にぶどう狩り行ったおみやげでくれたの!」
「へえ…」
ぶどうの甘さがおれの機嫌をとる。
(でも、おれ的には、たわわに実ったおまえのその二つの…ふ、膨らんだ…!)
「……」
「どうしたの?急に赤くなっちゃって?」
「……べつに」
…上手いこと、ヤル方向に持っていけるようなセリフを考えてみたけれど、失敗に終わった。
っつーか甘い言葉とかクソ松みたいにポンポン出てこないし。いや、あいつのはイタイだけか。
大体、ヤる前って、他のヤツはどうやってその雰囲気に持って行くんだ!?
考えたら、おれっていつも主からだったり無理やりだったり…。
もっとこう、スムーズに誘えるようになりたいんだけど。
——クソ松だったら…どうやって誘う…かな?
「はぁー、早く晴れないかなぁ。洗濯物たまってるのに…」
主が雨音を聞きながらつぶやいた。
「……神様じゃないから、わかんない」
「あーっ!さっきのわたしのマネしてやな感じ!」
そう…。
こういう、嫌味とか皮肉ならぽんぽん出てくんだけど…。
なんで甘い言葉が出てこない!?
「ア、アーハン?ハニー?」
「ぶっ」
主が口に含んだぶどうを吐き出した。
「あはははっ!!何なの急にっ!!」
「……」
ダメ…だった。
プレイボーイ風にしたけど、笑われて終わった。
「もう、食べている時に笑わせないでよ!…もしかして、また熱でも出た?」
主の顔が、近づいてくる…。