第23章 ぶどうって… 一松
一松視点
「ぶどうってさ…」
巨砲…いや、巨峰の皮をむいて、一心不乱にモグモグ食べている主に話しかける。
「……ま、待って。食べてるから」
こくんと飲み込む主。
「…なに?」
主は食べたばかりなのに、またぶどうを一粒もいで皮を器用にむき始める。
「…なんで、こんなに食うのメンドイの?」
「んー、鳥がついばみやすいように?」
「ふーん、ヒトには優しくないわけ?」
「そ、そんなの神様じゃないから分からないよっ」
「……へー」
反応が面白いから、意味のない質問をしてわざと困らせる。
主は、何を聞いても無視せずいちいちおれにかまってくれる。
おれは、こういうつまらない、ありふれた会話がキラいじゃない。
・・・
今、外は台風の影響で暴風雨が吹き荒れている。
今年は、9月に入ったら台風がわんさか日本にやってきていて、またしても動物園は見送りだ。
こんなに動物園行けないとか…なんか、おれ悪いことした?
…あぁ、そうか…生きているだけで悪いことしてんだ。
「おれなんかが生きて呼吸しているから、台風が」
「先手必勝。はい、あーんしてー」
「ムグッ!?」
話の途中だったのに、ぶどうを口に詰め込まれ中断を余儀なくされる。