第14章 カラ松の夜
「カラ松くん…」
恥ずかしさを胸に閉じ込め、ゆっくりと彼に向かい歩いていく。
わたしの姿を目にすると彼は立ち上がった。
「こっちへこい…」
彼の腕がわたしをさらう。そして、いともたやすくバスローブは払いのけられ床へ落ちてしまった。
薄暗いルームランプに照らされる瞳を覗き込むように、わたし達は見つめ合う。
「その…本当に、綺麗だ…」
恥ずかしくて言葉が浮かばず、キュッと唇を結ぶと、カラ松くんの指がわたしの頬を撫でた。
「どうした?そんなに頬を染めて。もっと自分に自信を持て。こんなに…可憐さと妖艶さを併せ持つ魅力的なレディは他にいない」
「そんなこと、初めて言われた…」
「当たり前だ。オレ以外の前でそんな姿を他のヤツに見せたら許さない…」
カラ松くんの言葉が、わたしの心を激しく揺さぶる。
いつも変なことばかり言うくせに、こんな時ばっかりかっこよくなるとか…ずるい…。
「主、夜空を見てみろ」
カラ松くんは窓の向こうを見上げた。
「わぁ、大きな満月!あれ?もしかして今日って…」
「あぁ、十五夜だ。二人の愛の門出にふさわしい夜だな。十五の夜……!」
「門出って…どこに行くつもり?」
「フッ、ほら…もっとちゃんと月を見ろ」
身体を窓際に向けられる。
「綺麗…ずっと見ていても飽きない…」
「主、どこに行くか知りたいか?」
カラ松くんが、わたしを後ろから抱きしめる。
「ふふっ、どこでも連れてって…」
「ああ…お前が笑顔になるなら、月にだって連れて行くさ…」
「んっ……」
雫が流れるように、彼の舌が背中を這う。
満月が見守る中、二人の夜は始まった。