第14章 カラ松の夜
「おまたせー」
ドライヤーの乾いた音が聞こえなくなると、
バスローブ姿の主がやってきた。
(なんて…美しいんだ!!!!)
「…ヴィーナスの微笑…」
「何言ってるの?」
オレは窓際のテーブルに主を呼ぶと、ワイングラスを渡し赤ワインを注ぐ。
「ありがとう。なんか、すごく贅沢な空間で緊張しちゃうな」
「ああ…今夜は日常を忘れられるような時をすごそう。…二人の夜に…乾杯」
「はいはい、かんぱーい」
グラスの中でワインが踊った。
「カラ松くんてさ」
「なんだいハニー?」
主はオレと視線を交えると、ホロ酔いの赤らむ頬に頬杖をつき、チーズを口に放り込む。
「なんていうか、揺るがない自分だけの世界があるよね」
「それはみんなそうだろう?だが、オレという存在は人々には少々刺激的らしく、近づく者みなを傷つけてしまうんだ。オレは誰も傷つけたくないのに…」
「あー、それってよく兄弟にイタイって言われてるから?」
「あぁ。おそ松にも相談したが、結局はそのままでいいと言われてしまった」