第11章 十四松の笑顔
主人公視点
「おつかれさまでしたー!」
団員に挨拶を済ませ、楽屋から出る。
今日の演奏会は、大曲だったのでバテバテになってしまった。
どんな内容かというと、一曲で一時間半にも及ぶ、オルガンやハープ、声楽独唱や合唱隊も加わる壮大な交響曲。
(今日は、十四松くんに早めに電話してあげられるかな)
会えない日々が随分続いたけど、毎日電話だけは欠かさなかった。
携帯を持っていない彼なので、朝や夜、いる時間を見計らって家電にかける。すると、いつも元気な声を聞かせてくれるのだった。
(夕方だから、まだ帰ってないかな?でも…早く声が聴きたい…)
楽屋口からホールを出て、バッグからスマホを取り出した時、
「コンサートおつかれさましーんぐんだんっ!!」
「じ、十四松くんっ!?」
一輪のひまわりを持った、スーツ姿の十四松くんが、わたしの目に飛び込んできた。