第78章 ※おまけ ありがとうを君に
五男の場合
今日は二月十四日、ハピハピ胸キュンバレンタイン!!
だった筈なのに。
「よっしゃ子供生まれたー!」
「おめで盗塁王!」
「ほぅーら御祝儀だあぁぁあ!!」
おそ松兄さんの番。
長女が生まれ、ボクらからルーレットで決まった金額をかっさらってった。
ハァ…むなしーーっ…。
ドタキャンとかありえないでしょ。
ボクが豆腐メンタルと知っての所業?
あつしくんを呼べなかったせい?
ハードル高いよねー。
本当ならば、今頃女子とチョコレートフォンデュをつつき合ってる予定だったのにさ!
「はぁーいチャイルドシート着けましょうねー」
「もー車にピンぶっ刺すだけでしょ。早くしてっ」
おそ松兄さんはボクが急かしても動じることなく、ノロノロと車の形をしたコマにピンク色の人物ピンを刺している。
「次はオレのターン!フーン保険か。ひとまず自動車保険に加入しておこう」
「六人いるから追突率ハンパないもんね。えーと僕は仕返しマス。はいおそ松兄さん、十万ドルちょうだい」
「はぁっ!?ふっざけんな!なんで俺!?」
舌打ちと共におもちゃの十万ドル札が床に叩きつけられる。
「うるさいバカ。積年の恨みだ」
涼しい顔でお札を拾うチョロ松兄さん。
え?野郎六人でバレンタインに何してるのって?
人生ゲームだけど?
なんで出かけずに家にこもってるって?
誰も予定な・い・か・ら・だ・よっ!!
正確にはボクだけ予定あったけどなかったことになったから!!
「やだやだ、バレンタインに誰からもチョコ貰えねーからって、ゲームで憂さ晴らしとかクソだな、クソ」
「それはおそ松兄さんでしょ。僕はちゃんとにゃーちゃんからチラリチョコ貰ったし!」
「あ?どうせライブチケット購入特典とかだろ」
図星だったらしく、チョロ松兄さんの眉尻がピクリと動いた。
おそ松兄さんは更に突き進む。
「いくら?」
「…八千円」
「こいつ…ちょおヤベェ」
それまでの雰囲気から一変し、部屋が悲しみに包まれ静まり返る。
無職童貞がチョコを得る為には、一個二十円のチラリに八千円も捧げないといけないだなんて。
ハァ…ホントにさ。
ボクはどうしてここにいるんだろう?
「あの…次いい?」
一松兄さんが沈黙を破り、ルーレットを回した。