第78章 ※おまけ ありがとうを君に
「で、なんで話してた内容は言えないわけ?」
十四松くんが出かけた後も、一松くんのイライラは収まらない。
「だから、一松くんをよろしくねって言ってただけだってば」
「おれの何をよろしくすんの?クズでどうしようもないゴミを押し付けるからよろしくって?」
ソファーに寝転び、わたしの膝に頭を乗せながらムスッとしている。
犬飼くんの一件以来、素直に甘えてくるようにはなったものの、嫉妬深いのは相変わらずだ。
「それは内緒。でも、十四松くんがそんなこと言うと思う?」
「……チッ」
当然、彼も思ってないのだろう。
わたしの右手にそっと触れ、ボソボソと独り言を口にし始めた。
「でも…いくらあいつだって、おれの……に…ない…」
「ごにょごにょ何言ってるの?」
「……べつに」
ぽふ、とわたしのお腹に顔を押しつけてきたので表情が見えなくなる。
一松くんのボサボサな髪で遊んでいたら、今日の最重要任務を思い出した。
「あ、そーだハイこれ!」
「あ?」
だるそうにこちらを向く彼に、猫のモチーフが愛らしいチョコを渡すと、目を輝かせ両手でチョコを抱きしめた。
「……こんな…残念クズに貰う資格なんて無いけど…」
「でも、一松くんに受け取って欲しいな?」
「………あ…りがと」
よかった。とっても喜んでいる。
人間の顔ってこんな色になるんだってぐらい赤くなってるけど。
「それとね、みんなにもチョコ持ってきたから帰ってくるまで家にいていい?」
「ふぅん…まぁいいけど。彼氏であるおれだけじゃなく、兄弟全員に用意するとか……わざわざご丁寧にどうも」
また嫌味な言い回しを…。
「今回はチョコに免じて許すけどさ。でも覚えといて」
不意に身体を起こし、わたしの腕を掴んできた。
そのままソファーに背中が沈められ、わたしの顔の横に両手をつき見下ろしている。
「き、急にどうしたの?」
「あげんのは…チョコだけ」
「ん…っ」
不意打ちの甘いキス。
ああ、ダメだ。
こんなに優しく蕩けるキスをされてしまったら、わたしの身体は彼のいいなり。
もう、逃れられない。
「お前は、おれのだから」
一松くんの黒目がギラリと光った。
四男の場合 fin