第78章 ※おまけ ありがとうを君に
一松兄さんが家を購入し、お次は十四松兄さん。
「いっくぞーー!」
無駄にテンションアゲアゲでイケイケな十四松兄さんが、だぼだぼな袖を捲ってルーレットに手を伸ばしたところで動きが止まる。
「あれぇ?」
鼻をしきりにクンクンし、なにかを嗅ぎつけている。
「十四まあぁぁつ?運命のルーレットを回すんだ」
「どうしたの十四松兄さん?」
「主ちゃんの匂いがする」
「へ?」
十四松兄さんはゲームなんてそっちのけで駆け足で玄関へ向かうと、小包を持って戻ってきた。
「主ちゃんからなんか来た!」
嬉しそうに小包を小脇に抱えボクの横へ座り、ルーレットに手を置いた十四松兄さんを見て、一松兄さんが一言。
「…開けないの?」
「でも、みんな順番待ってるから」
「いいから早く開けろって」
おそ松兄さんが「そーゆー変な気ィ使うのよせ」と付け加えると、十四松兄さんはコクリと頷き封を丁寧に開ける。
普段なら中身破壊する勢いで破きそうなのに、らしくないよね。
小包の中身は、手紙とベルギーの有名な高級チョコレート。
主ちゃんてば留学中で大変なのに、バレンタインをちゃんと覚えていたらしい。
「ふふっ、泣くほど喜ぶとか、十四松兄さん大袈裟なんだから」
でも、もし超遠距離な彼女がいたらボクも泣くのかな、なんて思ったり。
「ごめんみんな、ぼくゲーム抜ける」
「いいのかブラザー?一番金持ちだったのに」
「うん、手紙ちゃんと読みたいから…ごめんね」
そう言われては、みんな何も言えなかった。
「じゃあ十四松兄さん棄権で次ボクから回すね」
部屋から去る十四松兄さんを尻目にルーレットをクルクル回す。
「わーい職業ランクアップだー!スポーツ選手ー!!」
「おめでトッティー!」
みんながボクを祝福してくれた。
これで、毎日奥さんがブログに栄養管理バッチリでプロ顔負けな手料理をアップし、ワンランク上の人間醸し出せるぅ〜!
——ハァ…。
「んじゃ俺ね、おー給料日だ」
「フッ、オレはゴルフでホールインワン」
「えー…一松に追突しちゃった」
「……あざーす」
心の中に溢れ出す虚しさ。
うなだれる五人。
「僕たち…何やってんだろ」
ボクが聞きたいよ、チョロ松兄さん。