第78章 ※おまけ ありがとうを君に
「主ちゃん、ありがとう」
「えっ?」
突拍子も無く行動や言動が変化する彼に頭が追いつかない。
ええと、チョコのお礼を言ってくれたんだよね?
「…ど、どういたしまして!そんなに喜んでくれてこっちこそありがとう!」
「一松兄さんと仲良くしてくれて」
「っ!!」
「ありがとう」はチョコに向けられたものではなかった。
「一松兄さんはね、友達全然いないんだ。だからいっつもひとりぼっち」
十四松くんは、優しさを詰め込んだようなあったかい表情でふわりと笑う。
「でもね、もうだいじょーぶ!主ちゃんがいるから!あとはぼくらもいるし、猫もいるし、トト子ちゃんもイヤミもチビ太もハタ坊もデカパン博士もダヨーンも」
「ええと、つまりはいっぱいいるね?」
「たしかに!!」
堪えきれず声を上げて笑うと、十四松くんはキョトンとしながら頭を掻いている。
「これからも、一松兄さんをどうぞごひいきにーー!!」
「ふふっ、よろしくお願いします!」
手を差し出されたので握手をすると、両手で包みぶんぶんと振られ、その反動でわたしの身体もがくがくと動く。
「あれ?ぼくそーいえば、女の子触ったのご無沙汰ー!!」
「十四松くん、ご無沙汰って…」
「ご無沙汰男子!!」
十四松くんは、わたしの手を握りしめたままニッカリと笑う。
「主ちゃんのスッゲー柔らかいねっ!!」
「おい…何ぬかしてんの?」
…誤解を招くタイミングで一松くんが目を覚ました。
わたしの背後から、ただならぬ気配を感じる。
「…ナニがスゴくて柔らかいって?」
…その後、十四松くんの潔白を証明するのに、実に二十分も時間を要した。