第78章 ※おまけ ありがとうを君に
深夜0時過ぎ、合鍵を使い主ちゃんの家へ入るとリビングからテレビの音が聞こえてきた。
(よかったー、まだ起きてたのか)
咄嗟にカラ松に全ての罪をなすりつける言い訳を思いつき、笑顔でドアを開けた。
「ワリィ遅くなって!カラ松のヤローに捕まっちゃってさぁ………って、主ちゃん?」
目に飛び込んで来たのは、ソファーで寝息を立てる主ちゃんの姿。
節約だなんだいつもうるさいのに、テレビもエアコンもつけっぱなし。
ソファーの前にある小さなテーブルには、飲みかけの紅茶とバカ高そうなワインレッドのラッピングで包装された小さな箱。
いや、箱っつーかどっからどう見ても高級チョコレート。
(仕事で疲れてんのに、俺のこと待っててくれたのか…)
そういえば、いつもコイツの寝込みを襲ってるな、なんて思い出したけど、優しく抱き上げベッドへと連行した。
そっと下ろせば、ボディークリームの甘く刺激的な匂いに酔いそうになる。
そりゃあ俺だって健全な雄ですから、こんなフェロモンムンムンで無防備な彼女を目の前にして興奮しない訳がない。
でも…
「ごめんな。遅くなって」
そっと口づけて寝室のドアを閉めた。
今夜はゆっくり寝かせてやろう。
仕事後の汗臭いまま布団に入ったら、翌朝何言われるか分かったもんじゃない。
てなわけで、ひとっ風呂浴びてから主ちゃんのベッドに潜り込んだ。
「…ん、おそまつくん?」
「あ、起こしちゃったか?」
「う…ん、おかえり」
「ただいマッスル」
それは十四松くんでしょと言いながらクスリと笑った。
「すげー、よく分かったな」
「みんな個性強すぎるから自然に覚えた」
「えらいえらい」
髪を撫でてやると、嬉しそうに目を細めている。
「あのね、チョコ用意してたんだけど眠くなっちゃって…」
「うん、ありがとな。明日一緒に食おうぜ」
「やったー、奮発したんだ!ってお酒臭いんだけど!?」
うわ。ばれた。
「残業じゃなくて…飲んでたの?」
あー…天使が修羅になっていく。
でもさ、その怒った顔も…
「かーわいーねーー!そんなに早く俺に会いたかったのー?」
「もう!帰って!」
「やだー!ほらほらぎゅーーーっ!!」
「離してよ!!」
大好きなんだよな。
長男の場合 fin