第77章 ※ひたすら遊んで暮らしてぇ! 長男END
(…やっぱり、答えてくれる訳ないか)
振り向かないのが彼の返事。
膝を抱えて隣へ座る。
「今日ね、一松くんに会ったよ。昨日から何にも食べてなかったみたいでフラフラしてた」
「……」
これくらいの沈黙で引き下がるわたしではない。
「カラ松くんとトド松くんにも会ったの。カラ松くん、スーツすごく似合ってた。トド松くんは、夜のトイレが怖くて大変って目をウルウルさせてたよ」
「……」
元気になってもらいたい。
いつもの笑顔を見せて欲しい。
「十四松くんには会えなかったけれど、工場で働いてるんでしょ?お義母さんが教えてくれた。あとは——」
あとは、チョロ松くん…。
「チョロま」
「帰れ」
一方通行だった会話が急にせき止められた。
明るかった彼が、初めてわたしに向ける冷たい声。
突き放すような低い声色は、どこか物憂げで寂しさを隠しきれていない。
そんなの、ずっと一緒にいたわたしにはお見通しだ。
膝を抱く腕に力がこもる。
「お義父さんに聞いたの。チョロ松くんも残業しながら毎日がんば」
「帰れっつってんだろっ!!」
「帰らないっ!!」
感情が溢れて涙になる。
涙脆い自分が堪らなく悔しい。
「こんな…こんなクソダサいおそ松くんを見て、はいわかりましたって帰れる訳ないでしょっ!!」
ピクリ、とおそ松くんの肩が動いたかと思うと、
「…なんだと?」
まるで、怒りや悲しみ、痛みが全部混ざったような——複雑な感情で塗り潰された目が、ギロリとわたしに注がれた。