第77章 ※ひたすら遊んで暮らしてぇ! 長男END
深呼吸をし、そっと襖を開けて中を覗くと…
(いない…?)
真っ暗な部屋には人の気配が無く、開け放たれた窓からは風が舞い込んでいた。
姿は見えないけれど、さっき確かに階段を上がる足音が聴こえたはず。
ふと、揺れるカーテンが目に入る。
(もしかして…屋根?)
——きっとそうだ。ベランダから上へ登ったんだ。
屋根なんて登るのは初めてだし、怖いけど。
(行くしかない…よね)
意を決してベランダに足を運んだ。
ここで落ちたら死んでも死にきれない。
もしそうなったら、絶対におそ松くんに取り憑いてやる。
取り憑いて就職するまで毎晩枕元に立ってやる。
そう胸の中でぼやきながら、必死に屋根に掛かる梯子を登ると、目に映るはぽつんと座る彼の背中。
やっぱりそこにおそ松くんはいた。
胡座をかきながら、青い満月をじっと見ている。
「おそ松くん」
名前を呼ぶ。
声が夜空に吸い込まれてゆく。