第77章 ※ひたすら遊んで暮らしてぇ! 長男END
俺にとってニートな暮らしは、小学生の夏休みと同じだった。
宿題なんて最終日までやらねーで、毎日六人で無邪気に虫取りしたりプール行ったり、トト子ちゃんを追っかけ回し、イヤミとチビ太をからかって遊んでさ。
森にカブトムシ捕まえに行って、弟たちよりいちばんでっかいの捕まえて、「さすがおそ松にーさん!」なんて言われたっけな。
プールの帰り道、鬼ごっこして、俺とチョロ松二人して転んでひざ小僧擦りむいた時もあった。
ギャン泣きするチョロ松を見て、俺はおにーちゃんだから泣かないって決めて、ひざの痛みを我慢してチョロ松をおんぶして帰ったら、母さんすっげー褒めてくれたんだ。
「おそ松は立派なお兄ちゃんね」
って。
スイカの種飛ばしも俺がいちばん。
線香花火耐久戦も俺がいちばん。
夏休みは、俺を弟たちのヒーローにしてくれたんだ。
だから、夏の終わりが何よりも悲しかった。
新学期が始まり、自由を失いつまんねー授業に縛られるのが大嫌いだった。
誰に言われなくても自分で一番よく分かってる。
俺の夏休みは、とっくに終わってるんだって。
こんな暮らしはもうダメなんだって。
いつか終わりが来るって、なんとなく気づいてた。
気づいてたけど気づかないフリして逃げていた。
ガキの頃は見分けのつかなかった俺たち。
でも、大人になって別々の道を歩き出した。
それは、仕方のない事かもしれない。
だって俺たちはみんな、別の人間なのだから。
あーやだやだ。
だから一人っ子がよかったんだよ。
あいつらがいなかったら、一人だったら、こんな気持ちにならずに済んだってのに。
弟たちは変わった。
変わってないのは俺だけ。
つまりは——さ。
認めたくねーけど…。
俺よりも、あいつらの方が大人だったっつーワケだ。
俺一人だけ、小学生のままお兄ちゃん気取ってた。
——ただ、そんだけ。