第77章 ※ひたすら遊んで暮らしてぇ! 長男END
一松くんと別れた後、なんとなく胸騒ぎがしたので、買い物は辞めて松野家へ向かうことにした。
お土産はシュークリーム七個。
一松くんは家に帰って来ないみたいだし、さっき奮発したからおあずけだ。
(大丈夫かなぁ一松くん。まさか、喧嘩して家出とかじゃないよね。でも、仕事もしないで野宿って、家族は心配してないのかな…)
あーだこーだ考えながら、足下を眺め歩いていると、
「主……主じゃないか!」
前方から突然声をかけられた。
顔を上げれば、目の前にさっきまで話していた人とおんなじ顔。
「久しぶりだな」
スーツ姿だったので見分けるのは難しかったけれど、その声ですぐに誰だか分かった。
「カラ松くん!」
名前を呼ぶと、満足げに口角を上げ微笑んだ。
どうやら当たったみたい。
「どうした?ボーッとしながら歩いて」
「ちょっと考え事してただけ。カラ松くんこそ、スーツなんて着てどうしたの?」
そう聞くと、肩にかけたビジネスバッグをかけ直し、ため息混じりに笑った。
「フッ、この通り就活中さ。今、チビ太の家に居候中なんだ」
「カラ松くんも?」
「オレもとは?」
わたしは、少し前まで一松くんと一緒にいたことを話した。
「そうか、一松が世話になったな……って、まさか、おそ松に何も聞いてないのか?」
少し心細くなりながら頷く。
「おそ松くん、最近あまり連絡取れなくて。一松くんにもおんなじこと言われちゃった…」
不安が心を蝕んでいく。
一体何があったんだろう。
カラ松くんは、そんなわたしの気持ちを見透かしたように優しく頭を撫でてくれた。
「なぁ、少し時間あるか?話したいことがあるんだ」
真剣な表情を向けられれば、あぁ、やっぱり何かあったんだと心がざわつく。
「うん…お願い」
断る理由なんてなかった。