第77章 ※ひたすら遊んで暮らしてぇ! 長男END
とりあえず、コンビニでおにぎりやお菓子、飲み物を沢山買い、二人で公園のベンチに腰掛けた。
一松くんは、はじめは戸惑っていたけれど、しゃけおにぎりを渡したら、目を輝かせかぶりついた。
おにぎりを片手に肉まんもむしゃむしゃ食べ始める。
「ふふっ、そんなにお腹減ってたの?」
「……」
「えーと、朝ごはん抜いちゃったとか?」
「……」
返事は無いけれど、おそ松くんから一松くんは兄弟一照れ屋だと聞いていたので、気にせずゆっくり待つことにした。
夢中になって食べている隣で、わたしもメロンパンを頬張る。
と。
「……おそ松兄さん、元気?」
「えっ?」
わたしが聞きたかったことを、彼から聞いてきた。
「最近会ってないから分からなくて。一松くんの方が一緒にいるから分かるでしょ?」
一松くんはギョッと目を見開いている。
「…聞いてないの?」
「何を?」
「…おれ、家を出た」
「そうなんだ!」
仕事が見つかったのかと思い、笑顔で「おめでとう」を言うも、何故か無反応。
反応が無い代わりに、横目でわたしのメロンパンをチラ見して、一松くんもメロンパンの袋を開けてはむはむし始めた。
「アパートで一人暮らしなの?社員寮とか?」
「……野宿」
「ええっ!?」
「へーき、猫あったかいから」
猫と寝てるんだ。それなら平気だね…って、そういう問題じゃない。
「仕事見つかって家出たんじゃないの?そんな辛い思いをしてまでどうして?」
「…べつに。その方がいいと思っただけ」
「で、でも、そんなのダメだよっ!身体壊しちゃう!」
「そのうち……仕事、ちゃんと探すから」
ぼそりとそう言うと、ゴミをビニールにまとめて立ち上がり、プイッと顔を背けた。
「……助かった。死にかけてたから……この借りは必ず返す」
(その言い回しは、主に復讐で使うんじゃないかな…)
一松くんは、わたしを一瞥し軽く会釈してから、ポケットに手を入れて歩き出す。
「待って、一松くんっ」
寂しそうな瞳がどうしても気になり、思わず呼び止めると、遠ざかる背中が一度だけ振り返り、
「おそ松兄さんを…よろしく」
一言だけそう告げ、街の喧騒に紛れ見えなくなった。