第74章 ぼくだけの姫君 四男END
床に腰掛け、弟たちと共に一松と彼女を見守る。
「……」
「一松くん、わたしから言おうか?」
一松は主ちゃんに向かい、手を上げて「待って」のジェスチャーをした。
どもりながらもゆっくりと口が開く。
「………みみ、みんな……おれの…彼女…の…………主です」
「you主です。よろしくお願いします!」
おお、言えた!
エライねスゴいね!立派だね!
—パチパチパチパチ!—
五人の拍手に、一松は顔から湯気を立てながらペコリと頭を下げた。
そのまま主ちゃんをイスに座らせると「待ってて」と一言告げ、何故かホワイトボードをガラガラと押してきた。
あっけに取られる俺らを無視しながら、ボードにマーカーを走らせる。
「はいちゅうもーく。んじゃ、主に関わる際の禁止事項を挙げてくよ…。触るの禁止、まぁ当たり前だよね。話しかけるのは一日三回までなら許す。半径一メートル以内に近づくべからず。目と胸と太腿直視厳禁。最後にここ重要だから赤で囲んどく。はい、決して恋心を抱かないこと。以上を守れるなら…どうぞ、心ゆくまで…」
「何その厳戒態勢!?」
「もはやなんで連れてきたのか分からないレベルなんだけど!?」
ツッコミを入れたトド松とチョロ松に対し、ギロリと独裁者の目を向ける闇松。
「チョロ松兄さん…ことわざにあるでしょ。郷に入っては郷に従えって」
「どんな屈折した郷だよ!?」
一松。束縛は程良ければスパイス、ひどいと劇薬だぞ。
これは長男様の身体を張った教育が必要だな。
「誰がお前の郷なんかに入るかよ!はい握手ー!!」
つーのは嘘で、とりあえず女子に触りたかった。
「あははっ!どうも!」
「あぁっ!おそ松兄さんズルい!!じゃ、じゃあ僕もいいですか?」
我先にと押し合いへし合い、五人で主という名のアトラクション前へ並ぶ。
一松をガン無視し、俺らはもう主ちゃんまっしぐら。