第74章 ぼくだけの姫君 四男END
「目、閉じて」
素直に瞳を閉じる主。
ちゃんと、言うから。
怖くても恥ずかしくても、伝えるって決めたから。
「——主…いつもありがとう。お前のおかげでおれは変われた」
「っ!!」
驚き開かれた瞳に自分が映った。
だけど逃げずに見つめ返す。
この言葉を伝えるのは、これで二回目。
「大好きだ…主」
今までちゃんと好きって言ってやれなくてごめん。
これからは…もっともっと伝えるから。
「一松くん…」
つーか目を閉じろって言ったのに…何約束破ってんの。
おれが心筋梗塞で死んでもいいの?
「目を閉じた時、キスされると思ったでしょ?残念でした」
照れ隠しで必死に冗談を言うと、主が抱きついてきた。
「お、おいっ!」
不意打ちのハグで顔が熱くなる。
心臓がフル回転。
頭痛までしてきた。
だから電気つけるのはハードル高いってあれほど…!
「わたしもね、一松くん大好き!」
主はおれの胸に顔をうずめ泣きじゃくっている。
あまりの可愛さに緊張なんて吹き飛び、強く強く抱きしめた。
「一松くん…もう離れないで。ずっとずっと一緒にいて」
「…なら、おれを飼えばいい」
「分かった」
「いや、冗談なんだけど」
見つめ合えば笑みが溢れる。
飼われたくないって言えば嘘になるけどさ。
お前、前に言ったよな?
嬉しいことも嫌なこともはんぶんこって。
なら、おれも——。
「おれも…お前の為に頑張るから」
「頑張るって?」
「………………仕事とか、探す」
とびっきりの笑顔になった主の唇に、そっとキスを落とした。
主、もう悲しませない。
だからいつも笑ってて。
もしおれがまた不安になっても、辛くなっても、必ず主の笑顔に帰ってくるから。
おれの帰る場所は、いつだってお前の笑顔だから。