第74章 ぼくだけの姫君 四男END
一松視点
顔見ながら気持ちを伝えるとかハードル高すぎ。
実戦経験ないまま敵の本拠地に送り込まれるようなもん。
だから暗闇を味方につけた。
確かめるように主の頬を撫でると指先が濡れる。
「また泣いてんの?」
「だって…今…幸せで」
「ごめん…辛い思いをさせて」
自分の弱さで大事なものを傷つけるのは今日でサヨナラ。
信じるって、相手に期待するんじゃなく、自分の選択を信じることだって分かった。
自己責任ってやつ?
そう思ったら、自分を少しだけ、ほんの少しだけ、ナノレベルで好きになれそうな気がした。
もうおれは、お前が隣で笑ってくれるなら、それだけでいい。
いいとこなんて何一つないおれに、お前は微笑んでくれた。
好きだって言ってくれた。
だからもう笑って。
泣かないで。
パチリと電気をつけた。
「電気…いいの?」
「あぁ、泣き顔見てやろうと思って」
「ばかっ」
ニタリと冗談っぽく笑いかければ、泣きっ面が笑顔になる。
おれが一番好きなお前の表情。
クソ難しいこと考えているフリして、おれが欲しいのは単純な答えだった。
主に必要とされたい。
笑顔になってほしい。
たったそれだけ。
「主」
名前を呼ぶと、潤んだ瞳がおれを見つめる。
あー緊張する。
「あのさ、主」
「なーに?」
途中で心臓止まるかもしんない。