第74章 ぼくだけの姫君 四男END
主人公視点
ドッグショーを見終わり、赤塚駅に戻ってきたのは夕方だった。
店長に頭を下げ解散し、家に向かい歩き始めると、後ろにはニコニコしながら付いて来る犬飼くんの姿が。
「あの、夜じゃないし一人で平気だよ?」
「いいんスよ!女を家まで送り届けるのは男児たるもの当然です!それに…」
犬飼くんの癖なのか、またしても頭をポンポン撫でられる。
「俺、主さんが心配なんです。笑ってても寂しそうなの、気づいてないとでも?」
「ふふっ、そんなことないよ」
がんばって笑って見せたけど、強がれば強がるほど一松くんに会いたくなる。
ちゃんとわたしの話を聞いて欲しかった。
わたしの気持ちを信じて欲しかった。
公園に差し掛かり、わたしは歩みを止めた。
「犬飼くん、親切にしてくれてありがとう。でも、一人で帰りたいからここで」
「ダメです!」
「なんで…?どうしてそこまで…」
「元気になって欲しいから」
真っ直ぐな彼の真っ直ぐな瞳にわたしが映っている。
(本当だ、寂しいのバレバレな顔してるね)
わたしって、弱いな。
こんな頼りないんじゃ、一松くんを支えてあげられない。
泣きたくない。
犬飼くんに弱さを見せたくない。
それなのに。
一松くんを思い出し、勝手に雫が頬を濡らす。