第74章 ぼくだけの姫君 四男END
カラ松視点
(一松…どうしたんだいちまぁぁぁあつ!!)
何も言わずともオレには分かる。
最近の一松は様子がおかしい。
気のせいだって?
なら見てろ。
「一松よ、たまには兄弟水入らず、共にフィッシングなんてどうだぁ?」
「………今日は…いい」
(ほらいつもとちがーーーうっ!!)
いつもならば、ここでシカトや舌打ちしたり、「コロス」とか「クソ松」とか言うだろ?言うよな!?
ちゃんと怖い単語無しで返事するとかおかしくない!?
なぜそんなに落ち込んでるんだいちまーーーつっ!!
「カラ松兄さん何泣いてんの?一松兄さんの塩対応なんて、べつにいつものことでしょ?」
「トッティ!?いつも通りだと思うのか!?」
「うん」
鈍い!鈍すぎるぞトッティ!!
むしろソルトではなくシュガーだろ!
心温まる対応だったじゃないか!
だってフツーに返事したよ!?
一松が変わってしまったのは、深夜に帰ってきた三日前からだ。
夕飯も食べず銭湯にも来ず、就寝後そろりと布団に入ってきたんだ。
てっきりオレは、主の家でああしてこうなってるとばかり思っていた。
だが違った。
あの日から一松は、前にも増して自分の心を隠すようになってしまった。
彼女が出来てから、一松は少し変わったんだ。
なんとなく表情が柔らかくなったし、素直になった。
負の感情だけでなく喜びも表現するようになった。
それなのになぜ……って。
待てよ?
という事は、毒を吐かないのは元気が無いのではなく、素直にオレという存在を認め、好意を表しているだけだったのか!?
なんだ!勘違いか!
「フッ、一松。このカラ松タンクトップを特別」
「ねぇ、みんな」
「どーしたの一松にーさーーん?バランスボールであそぶー?」
「いや、いい」
んー?
いつも通りスルーされたぞ?
なんたるミステリアスボーイなんだいちまーーつ!!