第74章 ぼくだけの姫君 四男END
・・・
十分経っても戻ってこない。
笑い声も聞こえてきた。
誰だ?
おれと唐揚げを待たせる犯人はどこのどいつだ?
(あと三十秒以内に戻ってこなかったら、唐揚げ全部食ってやる)
楽しげな声が聴こえてきて、嫉妬と不安がグルグルとぐろを巻く。
(はい三十秒経過。罰として唐揚げは全部おれのもの)
・・・
結局、三十秒ではなく三分待ったら主が戻ってきた。
——つまり、十三分もおしゃべりしていた。
「唐揚げ冷めたんだけど…」
四個残しておいた。
べつに、主の為じゃないし。
腹一杯になっただけだし。
「ごめんね…バイトくんの仕事相談聞いてたの」
「バイト…『くん』?」
—ぴくんっ—
ヤバい。
思わず猫耳出そうになった。
「うん!先週から入った専門学生の男の子!」
「あぁそう、よかったですねェ」
「ホントよかったよー!男の子だと力仕事も頼めるしさ」
(は?なに嫌味に気づかず素直に受け止めてんの?大体バイトで男が増えたとか聞いてないんですケド…。しかも専門学生だぁ?ニートなめんじゃねーー!!)
唐揚げ残すんじゃなかった。
意地悪して全部食えばよかった。
「バイトくんのおかげで残業減りそう!一松くんといっぱい一緒にいられるね!」
「……唐揚げ食べたら?」
「あ…うん、残しておいてくれてありがとっ」
単純でスイマセンね。
そんなカワイイ発言されたら、心穏やかにならざるを得ないんで。
「あのさ…主」
気を取り直してもう一度誘おう。
…みんなに主を紹介したいから。
おれだって、彼氏なんだしそれくらい…。