第10章 トド松のかくれんぼ
——ガラッ
無情に開く襖。
「…おかえり」
いなくなれオーラ全開で兄さん達を出迎える。
「おういたの?なんか、機嫌悪くない?」
おそ松兄さんは、鼻をほじりながらバカ丸出しの顔でちゃぶ台に肘をつき座った。
「べつに…。まぁ、会いたかったと言えば嘘になるかな」
「何そんなにイラついてんだよ?帰るべき巣に帰ってきただけなんだけど」
「え?ヤダなぁ、ちっともイライラなんかしてないしっ」
「あ、そ。おっ!主ちゃんトコのケーキ?」
バカ長男に、テーブルに置いてあった食べかけのケーキを気づかれた。
「あ…さっき、買ってきたんだ!兄さん達の分も冷蔵庫に冷やしてあるから、二階で食べたら?」
「二階まで運ぶのは面倒だからここで食べるとしよう。上はテーブルも無いからな」
「チッ」
「えっ?」
クソ松兄さん。察して感じて、今すぐ消えろ!
「あれ?皿二枚出てるけど誰か来てたの?フォークも二つあるし」
ああもう、今度はシコ松兄さんかよ。
「あははっ!ボクってばドジだから、雑誌見ながら食べてたら落としちゃってさっ!新しいのに交換して食べたんだ!」
「ふーん」
「クンクン…クンクン…」
十四松兄さんがしきりに床の匂いを嗅いでいる。
その横に腰を下ろした一松兄さんが、怪訝そうに十四松兄さんに声をかけた。
「あ?どうした十四松…?」
「なんかねー、主ちゃんの匂いがするー」
(何その嗅覚!?反則技やめて?人類の進化の歴史軽々と凌駕しないで!?)
——ガタンッ
ボクは素早くイスから立ち、冷蔵庫から納豆を出してちゃぶ台の上にぶちまけた。
「ちょっ!?臭いんだけど!?」
「もうっ、折角食べようと思ったのにまたやっちゃった!」
「いや、お前ドジっ子設定無いからっ!!今更何キャラ変えようとしてんの!?」
「チョロ松兄さんだって、常識人ぶってたくせに、どんどん残念な方向にキャラぶっ壊れていったでしょっ?」
「はあぁぁぁああ!!??」