第16章 見つける
「うまい」「うまい」と皆が食べてくれる。
その姿を後ろから見ていると自然と頬が緩む。
「3つも作って大変じゃなかった?」
リコに聞かれた。
「今日は『お詫び』だからね。それに皆の好みが分からなかったし…」
そう答えた。
机の上を覗き込むと、おにぎりのタッパーが空になっている。
お兄ちゃんの最後の一言に感謝した。
「このおにぎり本当にうまいよ」
頬張りながら、伊月が言う。
「何が入ってるの?梅干し?」
リコに聞かれた。
「中身はウインナーだよ。それを紅しょうがをまぶしたご飯で握ってあるの」
「梅干しじゃなくて、紅しょうがなのね、結構いいかも」とリコが言った。
このおにぎりは、お兄ちゃんの好物でよく作る。
元は、ウインナー好きなお兄ちゃんの為に、お母さんがよく作っていたものらしい。
もちろん、私は覚えていないんだけど…。
お兄ちゃん曰く、
同じ材料でも私が作ったものは、
やっぱりお母さんの味には劣るらしい。
それでもすごく嬉しそうに食べてくれる。
懐かしいと言ってくれる。
そんな、陽向家の味。
(皆が気に入ってくれてよかった)