第13章 話す
「聞きたくなくなったら止めてくれていい」
そう、前置きして話しはじめる。
「…前に一人で乗って痴漢にあったの…」
皆の顔は見れない。
うつむきながら話した。
「従兄弟にね。一個上の方の…。『買い物着いてきて』って言われて一緒に行ったの…。」
皆、黙って聞いている。
「その帰りに喧嘩…。というか、怒らせるようなことしちゃったみたいで…『一人で帰れ』って置いてかれちゃったの。で、一人でラッシュの電車に乗った」
視線が痛い。
「は、はじ…めはね、な、なんか当たってるな…って感じで…。そのうち、て、手だって…わ、わかる…ようになって…」
言葉が詰まる。
「つ、つ、次の駅で降りようって…。そう思ったんだけど、反対側のドアが開いて…。降りれなくて。頭…真っ白になって…。声も…出なくて…。じ、自分なりに…身体よじったりしてさ、抵抗もしたん…だよ。でも、どんどん酷く…なるし…。」
話しながらも、みんなが下を向いていくのがわかる。
全てを話していいんだろうか?
「ふ、服の中にね、手が入って来そうになって…。だから、な、な、なんとかしなきゃと思って…『嫌だ』って言ったの。『誰か助けて下さい』って、だけど…だ、誰にも、き、気づい…て、もらえなくて…。そ、そ、そしたら、後ろから…」
大きく呼吸をした。
「……『相手してくれたら、おこずかい渡すよ』って、言わ…れて…」
「「「…は?」」」
黙って聞いていた皆がバッと顔をあげた。