第12章 立ち止まる
『大したことない』
そう言って私達を帰した木吉は、次の日、学校に来なかった。
隣の席が空いている…。
存在感のある大きな身体が隣に無いだけで、ひどく寂しく感じた。
「碧ちゃん、大丈夫?」
ぼーっとしていた視線を戻す。
「さとしくんも、なんか元気なくて…。木吉くんもお休みだし…。何かあったの?」
頭の中で昨日の光景が再生された。
ギリギリと、胸が軋む音がする。
「き、昨日…ヒドイ試合だったの。木吉がケガした。大したことないって聞いたんだけどね…」
自分の机から、誰も座っていない隣の席に目線を移した。
大したこと…無いわけない、よね。
「そうなんだ。碧ちゃん、大丈夫?無理しないでね。これ食べて元気出して!」
机の上に飴玉が置かれる。
「うん。ありがとう」
パッケージを破り、口に含むとレモンの味が広がった。
彼女の優しさに、胸の奥が暖かくなってゆく。