第11章 うつ向く
学校の最寄り駅までもうすぐ。
そんなときに、トントンと肩を叩かれた。
困った様に笑う水戸部がいる。
少し顔が赤い。
「どうしたの?」
問いかければ、目の前の彼は遠慮がちに腰の辺りを指差す。
「えっ?あっ!ご、ごめんなさい」
無意識だった。
水戸部のシャツの裾を掴んでいた。
いつも、お兄ちゃん達にするように…。
ぎゅっと握ってしまっていたんだろう、水戸部のシャツに少し皺が出来ている。
顔が熱い。
「あの…。本当にごめんね。無意識だった」
謝ってうつ向く。
私達の様子に気がついたコガが近くに寄って来た。
「二人共、どうしたのー?なんかあった?」
「ううん。なんでもないの…」
水戸部も首を横に振っている。
「陽向ー。水戸部が『気にしないで』って。どうしたの?大丈夫?」
「だ、大丈夫…。本当にごめんなさい…」
水戸部が片手を胸の前に出し左右に振っていたが、私は熱くなった顔を隠すように、うつ向いたままだった。