第11章 うつ向く
「皆、お疲れさま。ゆっくり休んでね」
学校に戻って、片付けを済ませるとリコの言葉と共に解散となった。
「お疲れー」「また、明日ー」それぞれが、皆に向けて口にしながら歩きだした。
今日一日、お世話になりっぱなしの水戸部にお礼を…と思っていたが、背中に手が当てられ、行く先を促される。
「よし、碧。帰るか」
木吉だった。
「あっ、ちょ…。あの…わ、私、水戸部に…」
「なんだ?水戸部に用事か?急ぎか?」
急ぎか?と問われてしまうとそうでも無い。
それに、
用があるなら水戸部の所へと木吉が私の腕を掴み、歩みを進めるので、なんとなく気恥ずかしくなってしまった。
電車での私の様子を、知られたくないという気持ちもある。
「や、やっぱりいい。大丈夫…」
「いいのか?」
「う、うん…」
結局…お礼は言えないまま、促されるままに歩きだした。