第11章 うつ向く
電車に乗り込んで数分。
空いていた車内が徐々に混んできた。
人混みに埋もれるような身長ではない。
皆、近くにいるし、
少し距離が取れればきっと大丈夫
試合の事だけ考えてればいいんだ
そう思っていたのに…。
開いた反対側のドアから人が乗り込み、車内に居た人が押される。
自分と皆との間に隔たりが出来てしまった。
大丈夫。
大丈夫。
なんとも無い。大丈夫。
自分に暗示をかけるように呟くと、
背中に…誰かがぶつかった。
呼吸が、速くなる。
視界が、歪む。
身体が急速に冷えた。
嫌な記憶が頭をかすめる。
息が…苦しい。
無理かも…
そう思ったとき、ぐいと腕を引かれた。