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【黒子のバスケ】伝える。聴こえる。

第9章 始める


お兄ちゃんは迎えにきたわけでは無いらしい。

「今日、飲み会。呑まないつもりだけど、たぶん呑まされるから、そのままチームメイトんとこ泊まるな。一人で大丈夫か?」

そう伝えに来た。


「メールや電話でもよかったんじゃ…」

私の呟きに、お兄ちゃんは苦笑いを浮かべる。

「だったら、ケータイはちゃんと持って行こうな」

そう手渡されたのは私のケータイで、
ここで、はじめて、自分が今日一日ケータイを持ち歩いていなかった事に気づいた。

私のケータイには、お兄ちゃんからかバスケ部からくらいしか連絡は入って来ない。

そのバスケ部の連絡でさえ、私がケータイを見なくても隣の木吉が教えてくれたりもするので、全然気が付かなかった。


「ごめんなさい…」



お兄ちゃんは心配性だ。
私が、電車に乗れなくなってからは特に過保護だ。

あの場には居なかったのに…
居なかった自分を今でも責めている。

いつまでもぐすぐずと泣く私に呆れたり怒ったりする事なく、ただ側にいてくれた。

『何も出来なくてごめんな』と言いながら。


今日も、何回電話しても繋がらず、メールの返事もないので、何かあったかと心配して一度帰宅したらしい。


そんなに自分を責めて欲しくない。
お兄ちゃんも、ましてや清志くんも、何も悪くないのに…。


ポンポンポンと私の背中を叩きながら「伯母さん家に行くなら送るぞー」とちょっと寂しそうに笑った。


私が早く立ち直ればいいだけなのに、
世の中では残念ながらよくある事でもあって、
大袈裟にすべきでは無いのに、
それが出来なくて心配ばかりかけてしまう。


『責めて欲しくない』と思いながらも、
お兄ちゃんや清志くんや裕ちゃんに甘えないとどうにも出来ない事が多い。


「どうする?明日の朝なら迎えに行くから大丈夫だぞ?」

再び問われて、

「ううん。家で大丈夫。歩いて帰るから大丈夫」と伝えて学校の前でお兄ちゃんと別れた。


お兄ちゃんが去ったあとに、


何も知らないコガが、

「陽向の兄さんスゲー過保護だなー」なんて笑っていた。
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