第9章 始める
「だって…。きっと、いい意味じゃないよね。『この人達は負けましたよ』なんて宣伝するみたいな名前…。もっと、ちがう表現の仕方があるはずなのに…。なんか…褒めてるようには聞こえなくて…」
いつもみたいに、思うだけで留めておけばよかったのに、つい口に出してしまった言葉。
「本人を目の前にして、陽向が今言ってる事もなかなか辛辣だな…」
私を責める意味で言ったわけではないんだろう…
少し苦笑いを浮かべて、ゆるく土田が突っ込んだ。
それを聞いて、ハッとする。
顔はあげられなくて、恐る恐る目線だけで、木吉の顔を見た。
驚いているような顔の木吉が居る。
「…ごめん木吉。私…ひどい事言った」
そのまま視線を落とす。
やっちゃった…。
きっと、怒らせた…。だから、私はダメなんだ
「いいんだ陽向。ありがとう」
木吉の声が聞こえた。
『ありがとう』?どうして?
聞こうと思って顔を上げたが、複雑な表情を浮かべる木吉に何も言えなかった。
もう一度だけ「ごめん」と呟いた。