第66章 伝える
「ごめんなさい」
「ごめんなさい」
何度も呟きながら、目元を擦った。
何に謝っているのかもわからなくなっている。
ただ、謝罪の言葉が口から出ていた。
だって、『ごめん』を言うのは凛じゃない。
私なのに…。
その姿に誤解を与えてしまったのかもしれない。
凛の手が私の腕を掴んでそれを止める。
顔をあげると悲しげな顔の凛と目が合って…
目線で誘導された先には、
《準決の日に、ずっと宮地さんを見てる碧が気になってた》
《俺は嫌だけど、碧が宮地さんがいいなら仕方ない》
そう書かれていた。
(違う。そうじゃないの)
上手く声が出せなくて、下を向いたままひたすら首を横に振った。
トントンと肩が叩かれる。
顔を上げれば、
簡易テーブルを挟んで向かいに座っていた凛がいつの間にか隣に来ていた。
正座と呼ばれる座り方で居住まいをただし、真っ直ぐ私を指差す。
そのまま、その手の人差し指と親指で顎を挟み、つまむ様に下へ動かした。
私達の始まり。
あの時と同じだ。
〔君が好き〕