第66章 伝える
《宮地さんばっかり》
広げてあったノートにそう書かれた。
「それは…」
それは…許して欲しい。
私は物心ついてからのほとんどを宮地家で過ごして来たのだ。
自分の意思とは関係なく…。
しかも、常に私の側に居たのはお兄ちゃんと清志くん。
お兄ちゃんがカメラを構えてしまう事が多かったから、自然と清志くんと二人の写真が増える…。
続きを言い淀んでいると、
アルバムを立てて私の方に向け、一枚の写真を指差した。
たぶん、誰かの結婚式のもの。
幼稚園くらいかな?
フォーマルスーツに蝶ネクタイ姿の清志くんの頬に、ピンクのドレスを着た私がキスをしている写真。
きっと、子どもの私達は式とか披露宴に飽きてしまって、
前にいる新郎新婦を真似て、
『お嫁さんごっこ』とか、
『お姫さまごっこ』とか、
そんな事をしていたんだろう…。
単なる、子ども同士のじゃれ合い中の一枚だった。