第66章 伝える
パタン。パタン。
分厚いアルバムのページを開く音が静かな部屋に響く。
微笑んだり、
目を開いて驚いたり、
そんな風に表情を変えながら、
アルバムを見ている凛を眺めていた。
うつ向くと長めの前髪で陰る優しい目元は、いつも私を気にかけてくれていた。
目が合えば微笑んでくれた。
凛が笑うだけで、私は安心できた。
ページを開く大きな手は、戸惑う私を何度も落ち着かせてくれた。
助けてくれた。
支えてくれた。
あったかい、凛の手。
凛から与えてもらった物は、数えきれないくらいあるのに、
私は、ちゃんと凛に返せていたのだろうか?
甘えてばかりだったんじゃないか?
こんな面倒くさい私が側にいて、凛は負担だったんじゃないだろうか?
そんな事を考えながら手元から顔に目線を移すと、口をへの字にまげているのが見えた。
「凛?何か…あった?」